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次期愛車への道 '22 MAZDA3 X Black Tone Edition [クルマ]

私の人生で最後から二番目のクルマになるであろう次期愛車選び。



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変なのが映り込んだ写真で御免。
今回試乗させていただいたのは、MAZDA 3 X Black Tone Edition。
MAZDA 3 は既に乗って記事を書いているじゃないかと思われるかもしれないが、今回乗ったのは "SKYACTIV X" と名付けられた違うエンジン搭載モデル。





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前述のように、MAZDA 3 というクルマ自体には前に乗ったが、そのときは 2.0L の通常のガソリン車。
今回のモデルも排気量としては同じ 2.0L のガソリン車ではあるが、世界初の "SPCCI" (SPark Controlled Compression Ignition) というディーゼルに近い燃焼を実現し、"SKYACTIV X" と名付けた。
正確には、マイルドハイブリッドも組み合わせて、パワートレイン全体で "e-SKYACTIV X" と名付けられている。


 


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今回の記事は目玉であるエンジンについて書くことが多くなるし、エンジン以外の部分は前にも書いているので適当に端折っていく。





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最近のエンジンはカバーで覆われている部分が多いのも珍しくないが、ここまでガッツリかぶせてあるのはこのクラスのクルマとしては珍しい。





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ただ、このカバーは前側のクリップをひねれば簡単に開けられる。
このエンジンがすごいのは、世界中の自動車メーカが実現しようとしても実現できなかった、予混合圧縮自着火 (HCCI; Homogeneous Charged Compression Ignition) という燃焼方式をほぼ実現して量産化したから。
ガソリンの希薄混合気を圧縮して高温にして自着火させることでディーゼルのような効率の良い燃焼となることに加えて窒素酸化物の生成も少ないということで 20年以上前から大学の研究室や自動車メーカの先行開発で研究されてきていたが、肝心な自着火する条件というのが極めて限定的であり、環境変化の大きな一般市場環境では実現不可能と思われていた。
マツダはそれを従来からあるスパークプラグを火種とすることで燃焼のきっかけにし、広い運転領域でほぼ自着火といえる燃焼を実現し量産化した。
普通の人であれば、「ふ~ん」で終わる話であるが、エンジニアからしたらその衝撃度は大きい。
燃焼状態をモニタするためのシリンダ内圧センサが装備されているということで、そのレイアウトや配線に興味があったのだが、見える範囲では確認することができなかった。





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しかもそのパワートレインにもちゃんと MT モデルを用意してくれているのがうれしい。





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インパネ周りは他のエンジン搭載モデルとほぼ変わらず。





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液晶での指針表示だが、とても見やすい。
これに加えて、ヘッドアップディスプレイで車速や制限速度が表示される。





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センターディスプレイで車両情報を表示させると、マイルドハイブリッドということで 24V のリチウムイオン電池への回生やモータによるアシスト状況がビジュアルで見られる。





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もうひとつ、燃焼状態の部分で、SPCCI 燃焼をしているとそれが表示される。
アイドル時はさすがにシリンダ内の温度が低いようで一般的なガソリンエンジンと同じ燃焼だが、走り始めて少し負荷を上げるとわりとすぐに SPCCI に切り替わる。
回転や負荷をかなり上げても広い範囲で SPCCI の状態は維持されていた。
もちろん走行時でも通常の火花燃焼に切り替わる領域はあるが、驚くべきは、その切り替わりが全く分からないということ。
横目でモニタをチラ見しながら切り替わるポイントを全力で感じとろうとするが、わずかなトルク差によるショックも感じることができない極めて自然なつながりを実現している。
この燃焼を実現して量産化したこともすごいが、制御システムとその適合も素晴らしい。




では、いつもの偏見による採点を。

エンジン;10点
全開性能スペックは、140kW@6000rpm / 240Nm@4500rpm。
エンジン自体はこの数値だが、マイルドハイブリッドのモータアシストにより、発進時最大 4.8kW / 61Nm が加わりさらに力強さを感じさせてくれる。
広い範囲で希薄燃焼を実現するためのスーパーチャージャ(マツダは出力性能のために過給しているわけではないということで、エア・サプライと呼んでいるが実際は出力増にも貢献している)で低速から力強く、かつ、軽々と加速する気持ちよさがある。
カタログ燃費は WLTC モードで 18.5km/L。
マイルドハイブリッドによる効果もあるので純粋なエンジンによるメリットはわかりづらく、そこがこのエンジンの最大の課題。
消費者からすれば、技術の蘊蓄はどうでもいい話であり、良く走り燃費が良ければそれでいいので。
ただ、個人的にはその技術的背景も含めて、満点としたい。

トランスミッション;8点
前に試乗した 2L モデルと同じミッションなので、そのときと同じ点数とした。
シフトフィールはロードスターのような FR モデルには敵わないが、それでもこのシフトチェンジ時の気持ちよさはマツダならでは。
走り始めてまず気づいたのは、シートポジションを合わせた後の自分の体とシフトレバーの位置関係の適切さ。
ここのところトヨタ車の試乗が続いたが、その後だからこそ気づくこのレイアウトの素晴らしさ。
左手をすっと延ばしたところにシフトレバーがあり、操作時の姿勢も極めて自然。
正直なところ、これと比べるとカローラスポーツは酷いと言ってしまうくらいの差がある。

操安性;8点
これもまた 2L モデルの点数を引き継ぐ。
が、これまで何台か乗ってきて、その良さは改めて感じる。
全ての操作を極めて自然に行なうことができ、そのひとつひとつが気持ちよく反応してくれる。
シビックの試乗記事では、同じように自然に感じたがそれを私は素っ気ないと書いた。
この感じ方の差はなんだろうか?
私にとってのいいクルマは、街中で周りに合わせてゆっくり走っているときでも気持ちよく走れること。
言葉には表せないものがある。

デザイン;8点
ここも 2L モデルの数値をキープ。

コストパフォーマンス;4点
試乗したこのグレードにナビ用の SD カード、ETC、ドライブレコーダをオプションで選んで、車両本体価格が 3,796,563円。
普通の 2L ガソリンエンジン同グレードと比べて、約70万円高い。(年次変更で普通の 2L もマイルドハイブリッドがつくようになり、私が試乗したときから価格が高くなっている。)
エンジニアの立場でエンジンをべた褒めしたが、その価格差に見合うほどのバリューを消費者に提供できているほどの差かというと、まったくそれには見合っていないと言わざるを得ない。
通常の 2L エンジンと単純比較して追加されているエンジンの装備品としては、大きなものだとエアサプライシステムとシリンダ内圧センサ。(他にもこのエンジン専用で仕様が変わっている部品はあるだろうが、元の部品との置き換えであればビックリするほどの差にはなっていないはず。)
シリンダ内圧センサは、エンジンの開発現場ではわりと使われているセンサなのだが、開発用のものは1本が20万円とか30万円くらいするほどの高価なものでそれが各気筒に必要。(4気筒であれば4本)
しかもわりと短期間で買い替えが必要になる消耗品に近い感覚のもの。
そんな高く信頼性の低いものをそのまま採用しているはずはなく、信頼性を高めつつ量産のためのコストダウンとか徹底的にやっているだろうが、それもたかがしれているはず。
そういうことを考えればこの価格差は理解できるのだが、そんなことはほとんどの人にはどうでもいい話。
よくわからないものを価格に乗せられても納得感は得られないだろう。

アディショナルポイントとしては、2L モデル試乗のときに気になったボディサイズでの -1点をこれまた踏襲することとするが、この画期的(かつ自己満足的)なエンジンに個人的にもっともっと加点したいので +3点、両方合わせて +2点とする。

総合;40点
とにかくエンジンに感動した。それに尽きる。
私のようなエンジンオタクにはものすごく突き刺さる。
だが、それに見合う価値が提供できているかというとそれはないというのも断言できる。
エンジニアの自己満足の世界で、いかにもマツダらしいプロダクトアウトの思想で世の中に出てきたエンジンだ。
マツダのことなので、これからも内燃機関の開発には手を抜くことなく継続していくだろうし、SKYACTIV X の第2弾、第3弾と続いていく(はず)に連れ、その価値はより多くの人にわかりやすいものに昇華していくものと信じている。
今はまだ、このエンジンは(私には)買い時ではないかな。
気になる納期は、3か月くらいとのこと。
先日の GR ヤリスの1年半以上(その後新規受注停止)という話を聞いていた後なので、これくらいだとかわいく思えてくる。


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ナツパパ

電気自動車の夢物語が少しずつ醒めてきている今、こういったエンジンこそをもっと大切にして補助をつけないと、と思います。大切なことは、Co2 の排出量を如何に減らせるかであって、そのための手段は多様であっても良いと思うのですがねえ。
なんで電気自動車をああまで優遇するのでしょうかねえ。
by ナツパパ (2022-08-14 16:28) 

リュカ

エンジン10点は凄いですね!
自分がこだわるところの得点がいいと嬉しいけど

>今はまだ、このエンジンは(私には)買い時ではない

と、冷静に判断しているのがYAPさんの凄いところだわって思いました。
by リュカ (2022-08-14 16:35) 

めぎ

エンジン10点満点ですか。専門家のYAPさんに満点をもらえるとは、凄いなあ。
今日のマウスの番組で、水素の自動車がなぜ普及せず電気の自動車の方が先に普及しているかが紹介・説明されてました。
電気もエコ電気を使ったものを紹介してて、それでいけるならまあこのまま電気が普及してもいいのですけど、ホントこの先どうなるんでしょうかねえ。
by めぎ (2022-08-14 19:40) 

おと

すごいエンジンなんですね~。いったい何がエコにつながるのか、判断が難しいです。電気自動車推進、どこかで方向転換するのでは?と思ってしまいます。
by おと (2022-08-15 02:32) 

Inatimy

エンジンがカバーで覆われるのは、エンジン音を抑えて静かにするためなのかしら・・・?と車に関してはよく分からないので、すみません、質問です^^;。
by Inatimy (2022-08-15 04:49) 

kuwachan

私だと「ふ~ん」で終わる話です(笑)
営業の方が色々話してくださってもちんぷんかんぷんです(^^ゞ
YAPさんのような方だとメーカーさんの側もいい加減に説明すると
突っ込まれるのでもウカウカできないですね。
by kuwachan (2022-08-15 13:14) 

YAP

皆様、申し訳ありません。
入力していたと思っていたコメントがおかしなことになっていたので、再度書き込みます。

ナツパパさん、リュカさん、めぎさん、おとさん、Inatimyさん、kuwachanさん、コメント & nice! ありがとうございます。

ナツパパさん、
仰る通り、CO2 削減が目的であって、EV 推進が目的ではないのですが、世の中、特に政治家でそこをはき違えている人が多いです。
全ては、ディーゼルの普及で対応しようとしていた欧州が VW のディーゼルゲート事件で当てが外れて、EV に活路を見出そうとしているだけです。

リュカさん、
新しい技術の試乗導入は、最初は自己満足に過ぎないことが多いですが、その技術が成熟していけば変わってくると思います。
ですが、ほんとにこれはすごい技術なんです。

めぎさん、
エコ電気というと、風力や太陽光だと思いますが、それらも不都合な真実を多分に含んでいて...
EU は自動車業界での主導権を握ろうと、焦っているようにも見えます。

おとさん、
EV 推進は間違いなくどこかで軌道修正すると思います。
今はチキンレースの様相です。

Inatimyさん、
いい線ついてますね。
この巨大なカバーで覆うのをカプセル化と言ったりするのですが、エンジンのノイズを吸音する目的と、エンジン停止時にできるだけ温度が下がらないようにして排ガスを浄化する触媒という部品が早く機能する目的です。
どちらかというと、後者の効果により期待してます。

kuwachanさん、
世界中の 99% の人には「ふ~ん」という話だと思いますよ。
+70万円の付加価値も消費者の立場ではそこまでないですしね。

tochiさん、xml_xslさん、knackeさん、sheriさん、ふるたによしひささん、@ミックさん、鉄腕原子さん、nice! ありがとうございます。
by YAP (2022-08-15 16:24) 

テリー

エンジンの話は、あまりよくわかりませんが、70万円の価格差は、ちょっと、買う気にならないかもしれません。
by テリー (2022-08-16 09:14) 

YAP

テリーさん、コメント & nice! ありがとうございます。
70万円の差を納得できる人は、なかなかいないと思いますよ。
装備だけを考えると、さらに安い 1.5L 版もあり、さらに価格差は広がります。
by YAP (2022-08-16 18:24) 

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